SAMURAI
サバオ*
あの人が死んだ。
僕の彼女に言い寄っていた
ドレッド頭の やたらかっこ良かった あの人
病気で アパートで 孤独死で
訃報を聞いた僕と彼女は「死に様」を想い
怖くて 震えた
すすり泣く彼女の肩を抱く 手が震えているのを
アイツが じっと見ていたんだ。
・
その時 僕は暴かれた
優しくするより 優しくされてみたかったので
僕たちは 初めての接吻を交わした
睦言に溺れて 途方に暮れて 救われた
・
少しだけ心配な彼女を訪ねた
試したい気持ち半分
柔らかな彼女に包まれながら
足りない と思う
堕ちたダメージは 欲求のイメージを明確にする
本当に欲しいのは
守りたい誰かではなく 守ってくれる人だったんだ
・
凛として 流し目で生きてくのが理想だった
けれども 寂しがりの僕は
厭な事は見なくていいと
眼を そっとふさいでくれる
優しい手を取るね
君を捨てるよ さよならする
幸せになるね。
・
気高く 孤独だった あの人の 逝き先に
酒と 音楽と 煙草が あればいいと思う
そこで幸せならばいいと思う。
どうしようもない 僕たちを肴に
面白がってくれればいいと思う。
・
そう願うことが
僕なりの餞なんだ。