ノラ
nonya


窓ガラスで漂白 されていない
光を鼻の頭 受け止めながら

コインランドリーの角 右に曲る
山田さんちの昼御飯 きつねうどん

網戸で裏ごし されていない
風を耳の後ろ 感じながら

ブロック塀の割れ目 すり抜ける
佐々木さんちの庭 固形肥料のニオイ

二度とキレイに なることのない
肉球で地面 思い知りながら

坂道を小走り 駆け下りる理由
安っぽいガムのニオイ 子供は一番の天敵

誰にも呼び止め られることのない
背中を少しだけ 伸ばしながら

駐車場の車の下 潜り込もうとしたら
トラシマ親分とバッタリ 尻尾を下げて退散

生きるための ルール
生まれた時から 知っている

どちらかが死ぬまで 喧嘩する
馬鹿な動物もいる らしいけどね

おっとそんなに キレイな爪で
僕に御飯 くれるのかい

どんなに美味しそうな 笑顔をしても
決してアンタの ものにはならないよ

僕はヌイグルミ じゃない
僕はオモチャ じゃない
僕は三角耳の ただの命

ついでに

僕は勝手気儘 じゃない
僕は可哀想 じゃない
僕は三角耳の ただの命

もうそろそろ 行くよ
僕も生きなきゃ ならないからね

ほんのり雨のニオイ してるから
今日は山中さんちの軒下 束の間の

夢を見ても いいかな



自由詩 ノラ Copyright nonya 2009-03-27 20:08:32
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