ノラ
nonya
窓ガラスで漂白 されていない
光を鼻の頭 受け止めながら
コインランドリーの角 右に曲る
山田さんちの昼御飯 きつねうどん
網戸で裏ごし されていない
風を耳の後ろ 感じながら
ブロック塀の割れ目 すり抜ける
佐々木さんちの庭 固形肥料のニオイ
二度とキレイに なることのない
肉球で地面 思い知りながら
坂道を小走り 駆け下りる理由
安っぽいガムのニオイ 子供は一番の天敵
誰にも呼び止め られることのない
背中を少しだけ 伸ばしながら
駐車場の車の下 潜り込もうとしたら
トラシマ親分とバッタリ 尻尾を下げて退散
生きるための ルール
生まれた時から 知っている
どちらかが死ぬまで 喧嘩する
馬鹿な動物もいる らしいけどね
おっとそんなに キレイな爪で
僕に御飯 くれるのかい
どんなに美味しそうな 笑顔をしても
決してアンタの ものにはならないよ
僕はヌイグルミ じゃない
僕はオモチャ じゃない
僕は三角耳の ただの命
ついでに
僕は勝手気儘 じゃない
僕は可哀想 じゃない
僕は三角耳の ただの命
もうそろそろ 行くよ
僕も生きなきゃ ならないからね
ほんのり雨のニオイ してるから
今日は山中さんちの軒下 束の間の
夢を見ても いいかな