奔光
木立 悟
右手を透る左手が
咽の前に描く球は
星の生まれ 空の生まれ
笑みの生まれ 穂の行方
陽曇雷海砂瞳
五本の明るい指と柱
あたたかさはどこからもやって来ない
あたたかさはぽつりとただそこに在る
冬の仮面を持つものが
片目を晒し景をまとい
茎を模した狩人のそば
鬼を歌い すぎてゆく
あたたかな肉を持ちかえるため
刃は幾度も午後にひらめく
ねじれた息と寒さの道
白より白い 舌と音の道
滝を見ている
青は既に
水を視ている
己れを貫き 他を連れてゆく
水のなかの光の樹
海をかたどる熱のかたち
鉄の中心 ひよわな命が
くりかえし鉱の空を呑む