湯舟
小川 葉

 
 
湯舟に浸かると
そこは港
ゆっくり岸を離れてゆく

目を瞑れば見えてくる
この世にひとつだけの海を
満天の星々を頼りに
湯舟はどこまでも行く

扉が開く音がして
お風呂場に
息子が入って来たので
港に帰ると
お父さん
どこ行ってたの
と聞かれて困ってしまう

夜更け
妻の湯舟が港を発つ
遠くから
潮騒の音が聞こえている
 
 


自由詩 湯舟 Copyright 小川 葉 2009-03-24 06:18:59
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