カオリへ。
結城 森士
君は俺の事を好きといってくれたのに
俺は君の事を好きだといえなかった
君は何度も俺の名を呼んでくれたのに
俺は君の名を呼ぶ事を恥ずかしがった
でも一方で君は
ほかの人にも愛を求め
多くの人から愛されたがった
俺はそれが嫌だったんだ
けど
嫌だ、嫌だ、と思うだけで
君の本当の悩みを聞く事も
結局は出来なかった
やっぱり俺は
本当の意味で君の力になる事が
出来なかったみたいだ
君は俺にさんざん愛を求めた挙句
俺に向かってこう言った
本当に好きなのはヒロ
私はヒロじゃなきゃだめなの
って
残念だけど
俺はヒロじゃなかった
本当に残念だけど
俺はヒロの代わりにされるのは
嫌だったんだ
だから俺は言った
ねぇカオリ
依存しちゃいけないと思うんだ
強くならなきゃいけないと思うんだ
自分の力で立たなきゃいけないと思うんだ
カオリは
最後まで聞いた後にこう言った
ヒロも同じことを言っていたの
でも、私はそれを言われるのが嫌だった
ヒロ…
そしてカオリは泣いた
俺は黙った
今まで本当にありがとう
どちらともなく
そう言って
永遠に別れた
カオリ
それから
君を泣かせてから
ずっと俺は後悔している
俺は、君に
依存するのはやめた方がいい
と忠告したのに
どうやら、よく考えてみると
依存していたのは
カオリではなく
俺のほうだったみたいだ
カオリは俺に愛を求めていたが
カオリは俺のことを好きだったのではなく
ヒロの幻影を俺に重ねていただけで
俺はなんだかんだで
カオリと一緒にいたくて
カオリの声が聞きたくて
だから一緒にいたのだ
別れてからようやく分かったのだけど
俺はカオリのことが好きだった
そしてカオリはヒロの事が好きだった
俺はカオリに依存していて
カオリはヒロに依存していて
カオリは
決して俺に依存していたわけではない
なのに
俺は君に、偉そうに言ったんだ
依存するのはやめた方がいい
だなんて
君が
その台詞を言われるのが嫌なのは
当然だ
多かれ少なかれ
ヒロもカオリに依存していたのだろう
付き合うと言うのはそういうことだろう
一方的に
依存している側
と決め付けられて
君は悲しかったのかもしれない
俺は
本当は謝らなければならない
依存していたのは俺のほうだった
君に注意する資格なんてなかった
カオリ
本当は今からでも君と話がしたい
でも俺にはそんなことをする権利などない
君を許せなかったのは俺で
俺の器量の狭さゆえで
君は悪くなかったんだ
依存していたのは
俺で
君を一方的に拒否したのも
ほかならぬ俺で
君を泣かせたバカは
俺だ
俺は最低だ