肖像画
松本 卓也
喉元を不快さが過ぎる時
改めて今日の終わりを感じ
過ぎていくテールランプの向こう側
誰かの背負う寂しさが見えた気がした
近所の本屋まで向かう道のり
学生や親子連れとすれ違い
公営住宅の窓から漏れる明かりが
黄昏を暖かく彩っていた
排気ガスと吐息が混ざりながら
エンジン音に導かれて坂道を昇っていく
夕日を背負いながら歩く孤独影は
頭の方へ行くほど街に溶け込んで
一つ一つの意味を問いかける行為が
どれほどに無意味なのか分かっている
ただ精一杯の毎日を重ねて伸ばし積み上げて
望んできた今日が終わろうとするから
見送りに涙は似合わないと思っただけで
迎える声も無い家を目指しつつ
自分自身を労う酒を抱えながら
明日に少しだけ今日の結果を映そう
自画像を描く領域は
空や大地ばかりじゃない
心の隙間で交じり合った原色を手にとって
少しでも自分らしい背景を