肖像画
松本 卓也

喉元を不快さが過ぎる時
改めて今日の終わりを感じ
過ぎていくテールランプの向こう側
誰かの背負う寂しさが見えた気がした

近所の本屋まで向かう道のり
学生や親子連れとすれ違い
公営住宅の窓から漏れる明かりが
黄昏を暖かく彩っていた

排気ガスと吐息が混ざりながら
エンジン音に導かれて坂道を昇っていく
夕日を背負いながら歩く孤独影は
頭の方へ行くほど街に溶け込んで

一つ一つの意味を問いかける行為が
どれほどに無意味なのか分かっている
ただ精一杯の毎日を重ねて伸ばし積み上げて
望んできた今日が終わろうとするから
見送りに涙は似合わないと思っただけで

迎える声も無い家を目指しつつ
自分自身を労う酒を抱えながら
明日に少しだけ今日の結果を映そう

自画像を描く領域は
空や大地ばかりじゃない
心の隙間で交じり合った原色を手にとって
少しでも自分らしい背景を


自由詩 肖像画 Copyright 松本 卓也 2009-03-24 01:20:44
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