暗くなってから公園
小池房枝

夜にこてんと横になったときの
すべり台の温かさを知っています
昼にそんなことしてると
子どもが降って来ますからね

そこかしこのベンチは
どれもこれもなんだかんだされてしまっていて
星や
月や雲や
夜間飛行中のジェット機
空に何が見えるのかを見るために
ごろんと横になれるのはすべり台だけ

夜のブランコも
なかなかいいものですけれども
あれは
上を見ながらでは酔ってしまう

大人の体の幅にはちょっとだけ窮屈なのも
プラネタリウムの座席みたいな斜めさ加減も
すべり台なら丁度よいのです

ただ
見ていられる方向が決まっているので
夕焼けや三日月が見たかったり
人工衛星やスペースシャトルの光芒とか
そんな何かお目当てのものがあるときには不都合だし
いつもいつも一人っきりでというのも
それはそれでなんだから

360°四方に
八つくらい足を伸ばした
タコ型すべり台が理想的です
木立が
街明かりを遮るようにぐるりと取り囲んでいて
光が
直接目に入る位置ではなしに
街灯もちゃんとある広場

そんな公園で
折に触れては待ち合わせて
流れ星を見つける競争をしよう

同じ空を
同じ時間に同じ場所から見上げながら
正確な意味では決して重なることのない視線を互いに
無限遠にさまよわせながら


自由詩 暗くなってから公園 Copyright 小池房枝 2009-03-23 23:43:07
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