プラットーホーム・シアター
A道化





明るい金属製の音階を
来る、行く
夜の回送電車の
黄色い、黄色い、硝子、硝子の
細切れのがらんどうを映写され
まばらに浮かぶ顔面は
いたずらにスクリーンと化している。


笑わない、泣かない、と頬は固定されて
私たちのやわらかさは
異物みたいに思われてゆく。
がらんどうへのドラマティックな抵抗を
本当は孕んでいる。孕んだまま
本当は立っている。


明るい金属製の音階を去る、あの光源を
見遣らない。と自ら定めたあらゆる顔面が
孕んだまま、ふっ、と薄暗闇へ没してゆく。
陣痛の夜に慣れてゆくふりに、慣れてゆく。
音楽も映像も無い、いないみたいな私たちは
捨てられたスクリーンだ、それでもまだ
立っている。



2009.3.23.


自由詩 プラットーホーム・シアター Copyright A道化 2009-03-23 01:50:29
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