やっと誰も来ない場所に
Giton
やっと誰も来ない場所にたどり着いた。去年の葉をつけたブリキ柳が、軟い金の粉を吹いている。崩れた石灰岩にカンスゲの穂。
(君は荷を下ろし、装置を組み立てる)
ここなら、いくらペンシルを飛ばしても人には当たらない。投げるものと投げられるもの。跳び揚がるものと発射台。推進力はどちらに?
(風速計を据える君の髪が乱れはためく)
綿毛のように風任せかね?それにしても、着地点を予めプロットすればエラーになる。着弾海域を国際機関に通報したミサイルではないのだ。
綿毛ならば、なによりも、実の着いていた花托のメカニズムに注意してほしい。そして、実と綿毛そのものの性質だ。浮遊のまにまに吹きそよぐ空気の及ぼす合力。カオスで近似できるかもしれないな。
トリガーにもっとこだわってほしい。性急にターゲットを求めないでほしい。求めると、お決まりの月並みだけを皆がつかみとることになり、蜜を集め損ねた働き蜂とぼくらは、稈屑を満載したトラクターを見送ることになるんだぜ。
(里はもう麦秋)
雲が光ったな。はやく実験を済まそうじゃないか。ぐずぐずしていると、霧にとりまかれてしまう。
(一瞬の火柱。垂直に揚がるペンシル)
あっちの森の際で、驚いた猿の群れが逃げて行く。