潮騒
ことこ

海に沈殿した子ども達を
耳かきで掻き出す
「わたし早くママになりたいの

餌を求めるように
口々に主張する子ども達は
飽和した酸素に触れたとたん
波に揉まれて白い泡になる

灯台の下で
何でもないふりをして
子ども達に道を指し示している
あれは私だ
「どちらが北北西ですか

尋ねられた日には
決まって
耳鳴りが止まない

垂れこめる曇天のもと
遡及していく
風は乱れる
ジオイドの存在を信じていた
海はべろりと剥がれて
両耳を手で塞げば
私の中で
潮騒が
うごめいている


自由詩 潮騒 Copyright ことこ 2009-03-20 23:06:25
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