シンシア
梶谷あや子
ひとりで育ったホルトの花
透明な花粉にむせて
おとうさんは毎日
緩く息を止めた
時々家に来たトロバスに
一緒に旅立ちを(そっとして置く事を
決めた親友も、乗り続けている
ぼくはなぜ何人も
赤い額を撫ぜるのかと
乾いたやさしい髪がうねっていて
さあね、でも、ヒナゲシの
つきよぼくらは
かならず戦おうと言っていたよ
あの過去にうずもれた大地
にももう満ち足りたので
いつもどることはないんだね
自由詩
シンシア
Copyright
梶谷あや子
2009-03-20 22:53:48