個人の世
真紅

ちいちゃな水溜りに
蟻をひょいと浮かべては
もがく様子に薄笑い

生と死、表裏一体の瞬間

否定は出来ない征服欲

いつの頃かヒトは人と成り
あまた欲求を抑え込む
解放の時期は死んでもやってはこない

だがしかし例外も確かに存在する

綺麗事を並べ立てる夢想者を笑う自分
それを笑う誰かが存在するように

まるで螺旋のようだ
まるで宇宙のようだ

終わりがない 始まりもない

まるで欲求のようだ

終わりがない 始まりもない

遠くで葉の擦れる音を聞いた
鳥が飛び立ったのだろう

視線を戻す

蟻が水溜りの端までたどり着いた

右足の痺れがそうさせたのかは定かではないが

わたしは蟻を水溜りの真ん中へ 中心へ

落ちた汗は単なる老廃物 彼の栄養には成り得ない

終わりはすぐそこ わたしが飽きるかあなたが死ぬか

始まりは 始まりは 始まりは

右足の痺れが心地よい


自由詩 個人の世 Copyright 真紅 2009-03-20 21:50:47
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