除雪車
小川 葉

 
 
夜が青く明けてゆく頃
除雪車の音が聞こえている
ひとつの戦争のように
降り積もる雪を魂に置き換えて
作業は続く

まどろむ真冬の月の目は
わたしたちと同じ
出来事だけを音で知り
見たことのない争いの果て
話者の声も失われてゆく

運転手の声
息遣いや仕草
筋肉の動くさま
ため息
それ以外にもにくしみと
やさしみとかなしみ
そして慈しみとはつまり
早く家に帰りたい
戦場の孤独

朝、わたしたちは
雪のない路を歩く
路肩に山のように積まれた
雪を死者と知りながら
春に向かって歩いてゆく

たくさんの命が続く
残された季節に向かって
路は開かれている
 
 


自由詩 除雪車 Copyright 小川 葉 2009-03-20 21:41:31
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