盲目の象
あ。

大きな声を上げて喜ぶ子どもと肩車する父親
隣でカメラを構える母親
恐らくまだ若いのであろうカップル
日曜日の動物園は賑わう


君の口からは
たくさんの刃物のような言葉が発せられ
こんなのどかな風景に
わたしは一人負傷していた


それでもわずかの希望を信じて
そっと横目で顔を見てみる


君の肌はかさかさと乾いており
正面を見据えた瞳には何も写っていなかった
それはまるでさっき見た
盲目の象のようだった


もう帰ってくることはないのだと
その瞳にわたしが写ることはないのだと
傷だらけのわたしにもよくわかった


自由詩 盲目の象 Copyright あ。 2009-03-20 00:30:29
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