盲目の象
小川 葉

 
象が海を渡っていく
かわいそうに
目が見えないのだ
かわいそうに
と人は言うけれど
思ってもいないことを
言葉にしてしまう
人もまた十分かわいそうだった
かわいそうに
何度も言葉にしてみても
象が振り返ることは一度もない
言葉なんていらない
海を渡る象を
見えなくなるまで見送った
僕もまた盲目だった
 


自由詩 盲目の象 Copyright 小川 葉 2009-03-19 04:11:29
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