硬直したネクタイと額の皺を結ぶやさしさ
蘆琴

足元の空が、溢れるビールのやうに廻転してゐる
新しい笑顔を求めて、またさり気ない人生の表面を踏んで歩くのか
複写された私自身は永久にほころびぬ
無碍な命を久遠の先々まで保つてゐる、私といふ私

ああ、優しさ
放埓な精神のビートが刻むのは涙の痕
いつまでも消えぬ名が、暗闇に浮かぶ焚き火の焔のやうに

この休符は何を破砕しやうといふのだらう
彷徨の果て、一体誰の胸へ収斂していくのか

このままコンクリートを舐めてゐても
面影は戻つてこない
いま、日が沈んだばかりだから


自由詩 硬直したネクタイと額の皺を結ぶやさしさ Copyright 蘆琴 2009-03-18 02:50:20
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