エ論〜ひどく限定された語彙の下で〜
キリギリ

私にとってエロとは画面の向こうで行なわれる各種ハレンチな行為のことであり
それ以外はない。それは画像や動画であり無修正やモザイク入りである。この
百花繚乱肉祭り常時開催中常時接続中のネット社会においてよっぽどの愛着や
こだわりがなければ同じものを再び観てしまうということはない。再び観たいと
思ったら見つからない、ということはよくある。私はダウンロード派ではない。
コレクターではないのだ。常に偶然の良き出会いを求め彷徨う詩人である。
停滞とは即ち死、である。満足せる豚である。

ところで世の中には自らの性に対する考えを詩に書き朗読する女人がいると知り
驚く。おいおい何だそれは。何サービスだ。どこの店に行けばいい。対面の場合は
幾らだ。指名は出来るのか。その他オプションなどは??

女性が書く性についての詩。それを読む時。一般的な詩としてのレベルと私の
評価は反比例する。大抵「回りくどいんじゃ!」と言いたくなる。心情風景や
比喩などは不要である。もっとストレートに、何をしたのか、何がしたいのか、
どうされたいのか、何処をどうされたいのか、などを具体的に、必要ならボディ
ランゲージを伴って彼女らは表現すべきである。大切なのは内面の探求ではなく
外面の克明な描写である。

表現とは「表わし」「現す」ことである。自己表現とは「自ら」を「表わし」「現す」
ことである。その服はしまむらかユニクロの「表現」である。その下着はワコールか
セシールの表現である。自己ではない。わかるか?自己ではないのだ。では
表現者を自称する貴女が表現すべき「自己」とは何だ。まだ分からないのか?

私はオカズを探している。モナリザの右手で勃起するような大人しい生活を
送れるならばどれほど幸せだろう。モナリザの微笑はのっぺりしている。
ミロのビーナスには腕がない。ダビデ像に用はない。私の健やかな生活に
必要なものは性に関する「詩」ではなく「画像」「動画」である。無論
それは「芸術」とは一切関係ない。私が豚レバーよりも憎むのはいわゆる
「芸術的なヌード」「おしゃれヌード」の類いである。あれは乾いている。
スルメよりも乾いている。噛めば噛むほど薄くなる見当違いのそれらは早急に
撲滅しなければならない。あと叶恭子が何をしようと一々ニュースにしなくて
いいと思う。

しかし、詩である。素人女性が(何の「素人」であるかは此処では触れない)
さほど突出、卓越しているとは思えない言語能力を駆使して自らの性器、自慰行為に
ついて語る、演劇調といえども決して場慣れした感はない、普段はどんな生活を
しているのだろう。OL?学生?ニート?お堅い公務員?きっと胸を張って
「表現者です!」とは言えない一般的な生活を送る彼女らの下半身事情がその
口から。ぜひ1度お願いしてみたいものである。3000円くらいで足りるだろうか。


ここまで書いて、一日置いた。


「視野を狭くすれば動きやすくなる」と教師は言った。
ならば肌を過剰に露出するコスプレイヤーと
赤裸裸に性を詩う詩人の違いは何だろうか。
そして彼女らは「普通」から除外されるべき存在だろうか。スイーツ(笑)
または「羞恥」とは何か。

まずコスプレイヤーと詩人について。両者とも良いものであるが
身内であって欲しくはない、という部分で一致している。
コスプレイヤーはアニメを、詩人は日本語を依り代にして自らを現す。
それはケではなくハレの場であり帰還を約束された日常からの小さな
逃避行動である。詩人は日常でその単語を発したら、会社、学校、家庭内で
そんなことを言ったら大叔母に叱られる、勘当されるようなことを
赤の他人、または緩い知人の前で朗々と述べる。私の性器はミニマルである。
必要最小限の要素を持ち、反復によって快楽をもたらすこと必至。などと述べる。
それがいわゆる「プレイ」とどう違うのか。私にはまだ分からない。

自らの、自らへの要請。詩、朗読による自己表現行為においてそれらが
言語の取捨選択の準拠となる。日本語は広い。マッポ、天皇、篳篥、100円、
どいて、老眼、女医、二級建築士、お汁粉、怒号、たくさんあるね、など沢山ある。
先んずる心の有り様によって順列付けられ、適、不適に分けられ、やがて1文を成す。
心という不確かなものが我々の表現活動を束縛している、と言っても過言ではない。

「羞恥心とは馬鹿を誇る心という意味ではない」

ここまで読んできた貴方は私のことを馬鹿だと思っているだろう。
同じように私も彼女らのことを馬鹿だと思っている。だが馬鹿であることと
間違っていることは違う。私が自分を間違っているとは思わないように
彼女らも自らが間違っているとはまだ思っていないのだろう恐らく。
詩、文章を書くことは詩、文章を書かないことの真逆であり私は
敢えて此処には書かないでおこうと思っていたことを此処では書かない。

続く。
次回は心/羞恥/壊れる/正しい/評価/などについて独り遊び。


散文(批評随筆小説等) エ論〜ひどく限定された語彙の下で〜 Copyright キリギリ 2009-03-17 23:18:54
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