灰皿
あ。


(地下の喫茶店ではジャズが流れ)
しかし、あれですな。
どうしました?
最近の禁煙推進運動にはほとほと困り果てております。
そうですね。
我々喫煙者の肩身がとんどん狭くなっておりますよ。
ははは、私も家では娘にいつも煙草臭いと嫌な顔をされていますね。
余りにも嫌煙の人間が多すぎるのですよ。生き辛いったらありゃしません。
おや、灰が落ちそうですよ。
おっと、危ない危ない。


とん、とん、とん。


(ゆっくりと煙草の煙を吸い込み、吐き出す)
この一服の気持ちよさといったら例えようもないのに。
仕方ないですよ。時代ってやつですな。
ジャズと珈琲、それにこいつは極上の組み合わせだというのに。
何だかそんな映画がありましたなぁ。
コーヒー&シガレッツですかね、
あれは珈琲と煙草がメインになっているわけでもなさそうですが、
それでもあんな映画になるくらいにこいつが極上の組み合わせってことですよ。


(手元の黒珈琲を一口すする)
私は珈琲が好きではないのですが、そういわれるとしっくりきますなぁ。
そうでしょう。この良さを知ることが出来ないなんて不幸以外の何でもないのですよ。
煙草に合うのは珈琲とジャズ、他には何かありますか?
他にですか。例えば酒とか・・・。
違いますよ、灰皿です。
灰皿?
極上の一服には、極上の灰皿です。
なるほど。そういえばこの灰皿はなかなかのものですな。
だからこの店は煙草を吸うのにぴったりなんですよ。



(屈折した光りを放つ水晶の灰皿)



自由詩 灰皿 Copyright あ。 2009-03-16 19:37:12
notebook Home