叙景事情
よつやとうじ

塗り絵に多くの
期待をしては
いけませんよ
消えそうな手で
果てるまで
そういって命を乞うた

天花粉のけむり舞う
七百十号室は
発疹の若い火照り

八朔を剥く指も
ここでは何ひとつ
生産致しません

溶けそうな緑が
海に切れ込む空が
乾いてひび割れた
午後の素足を
酸い水に浸し

どうか身を震わす
季節の名があれば
おひとつ分けて
頂きたいのですと
張り付いた前髪

今は脆い骨の音が
唯一の答えであるように
正しいシーツの皺も
ひとつだけなのです


自由詩 叙景事情 Copyright よつやとうじ 2004-08-22 14:45:53
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