灰皿
小川 葉

 
戦争が終わらない
真夜中は
戦争を始めるため
回避するため
会議室で行われている

夜更け
戦争のための戦争は
繁華街に移行され
朝まで続く
眠らない街に
灰になって積もってゆく

お刺身の盛り合わせも
焼き鳥の盛り合わせも
とにかく盛り合わせでなければならない
男たちはいかなる時も
見栄っ張りに傲慢に
時には無責任に
意見を述べなければならなかった
自分以外しか
守るものがないような素振りで

お刺身の醤油皿に
間違えたふりして煙草の灰を落とした
ことさえも策略かもしれない

生で殺されたり
焼かれて殺されたり

みんな死んでしまう
皿に落とされた煙草の灰が
爆弾で焼かれた
人の亡骸に見えてきたけれど
朝まで決断しなければならない
大問題とされる問題があるので

反戦デモのメンバーも
皿の上で灰になってみたりして
そんなパフォーマンスはいかがなどと
戦うことに大忙しだ

翌朝
掃除のおばさんがやってきて
灰皿に落とされた
数え切れないほどの灰を
きれいに片付けると
夜の戦争は終わる

その頭上から
投下された太陽が
輝き続ける日々の一日が
今日だとしても
 


自由詩 灰皿 Copyright 小川 葉 2009-03-16 00:03:13
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