音楽の中のヨルノ
ヨルノテガム
ヨルノテガムが階段を上がっている
(ここでリンゴジュースを飲む)
もうひとりのヨルノテガムは鉛筆をすべらせ
魂のようなものを受け取って離さないでいる
(ここでヨルノは階段を上がる)
彼は見つめる
くり返し
彼は見つめている
(物の造形は形容されるのを待つ)
・長い髪のようなバスタオル
・脱ぎ置かれたタートルネックは人型のまま
・ネジ巻き式時計のネジ、巻かれないままの世界
・三週目のゴミ箱
・私しか価値を見出していない絵画と何度もお喋り
・(くり返し) 彼は
彼は見つめる
念力でヨルノテガムを動かす
(掃除しようね。)
彼はピアノを弾きたがっている
彼の音楽は言葉の連なりによる世界の構築と似かよっている
その為ピアノに触るまでに至らない
(密やかに、ひっそりと 気づかれずに)
音楽は鳴っている
(くり返し)
彼は見つめている
彼は触れている
彼は待っている
( )
ヨルノテガムは人形である
彼の笑い顔や泣き顔を見たことがない
(リンゴジュースがお腹でキュンと鳴っている)
くり返し
――――――は階段を上がっている
ヨルノテガムは階段を下っている
彼が笑ったり 胸が凍っていたりの世界は
何と静かでひとりなのだろう
(人はこの世界以外の世界であれば愛せるのではないだろうか)