「ビバ、カリフォルニア!」
雨野六也

「ビバ、カリフォルニア!」
三つ指をついた仲居さんはニコリともせずに呟いた。

奥の廊下を茄子の一夜漬けが遠慮がちに通り過ぎる。
冬の窓は凍っているかのように静かに向こう側を映している。

このソファは脚が四つあるんだな。
誰かに確認すると、ソファだからな。などと返される。
便器の白と白衣の白は、同じ理由だと知ってはいたが、たった今気が付いた。
絡まったロケット花火はこのままか、そのままか、そのまさかか。
渋滞明けには清々しくもあると思う。

金魚鉢を覗く、金魚はおろか、水も入ってはいない。ところがこいつは金魚鉢なのだ。
まずは、と言っておきながらもう三時間は経つ。昼になってしまった。
ペン立てに鉛筆を入れる時には、芯を上に向けるか、下に向けるか、
もしくは鉛筆を入れないか。

「二つ目の角を右に曲がると道が見えるでしょ。その道をあなたの思うように進めば、あなたの行きたい所に着くはずですよ。」
昔からの言い伝え。二つ目の角が見付かればの話みたいです。

空から羽根が舞い落ちて来た。道に落ちました。
後は風に飛ばされるか、チリトリに入るか、そんなところでしょうか。
嘘をついたら鼻が伸びる。ケーキを食べると腹が出る。例外は認められない。
動く気配のない鎧。そして、変わる気配のない歴史。解釈だけが二転三転。

うつせみの中で君だけが主張している。白も黒も光がなければ同じだと。


「ビバ、カリフォルニア!」
神主は祈祷の最中に口を滑らした。


自由詩 「ビバ、カリフォルニア!」 Copyright 雨野六也 2009-03-14 22:08:14
notebook Home 戻る