シ・ン・ケ・ン跳び箱
サトタロ

整列したシンケンヴルストたちが
次々と跳び箱を越えていく
既に二十一段が積み上げられているが
まだまだ限界は見えない
体育教師はとうに興味を失い
くわえたままの笛をてきとうに吹きながら
カレーを作り始めている
シンケンヴルストたちは集中を切らさず
ロイター板を踏み切り続ける
跳躍開始から二時間が過ぎた頃
跳び箱は四十七段を超え
シンケンヴルストたちはロジンまみれで
ミュンヘナー・ヴァイスヴルストと見間違えんばかり
体育教師はカレーの寸胴鍋に肩までつかって
唇を噛みながらロイター板を睨んでいる


自由詩 シ・ン・ケ・ン跳び箱 Copyright サトタロ 2009-03-13 01:35:12
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