彼は空を飛びたかった
亜久津歩


麻酔の切れた
風見鶏は
錆びついた羽で
取り戻したくて
逆回りを始める
けれど
優秀な風見鶏は
一度たりとも
選択肢を誤ったことは
なかったので
わからなかった
西なら西を
北東なら北東を
吹雪でも月蝕でも
正しいことを
正しいと思うことを
繰り返してきた
小鳥たちのさえずりに
四季薫る風に聴き惚れながら
信じれば夢は叶うと
少しずつ近づいていると
軋む足を励ましながら

いくら回ってもとどかない空を仰いで。


自由詩 彼は空を飛びたかった Copyright 亜久津歩 2009-03-11 19:00:46
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