嘘の砂漠
智鶴

美しいものは全て偽りだ、と
指先の感覚が暗示をかける
諦めたように
優しい痛みなどは
もう、飽きた
望んだだけの悲哀も
苦しさに似せた甘美な夢も
すべて受け入れて
私は大人になった

ただ、何も知らないまま

貴女は私の残骸を抱いて
知らない私の名前を呼ぶ
泣いてくれるのなら
それはきっと幸せだろうけど
いずれ貴女も忘れていく
私など居なかったかのように

風化していく
残骸

貴女が投げ捨てたような感情で
私は今も潤っていく
骨が乾く砂漠も
貴女がいなくなっても
幽霊のような顔をして

今は飛べずに此処に佇むことも
悪くはないと思っている
いつか何処かに置いてきた
私の残骸を抱えて
踏み出せる
到底飛べそうもない空に


自由詩 嘘の砂漠 Copyright 智鶴 2009-03-11 01:46:23
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