夜勤即興詠
佐々宝砂
なんとなく後ろめたしと思へども夜に備えて眠る日盛り
働くも働かざるも自由なり君に逢ひゆく自由なしとて
ロボットの腕は緻密に動きゐてその暖かき体温あはれ
深夜0時冷たく硬き弁当を昼飯と呼ぶ夜勤の我等
一日の半ばを工場に働きて過ごす少女の青きマニキュア
明けの星消えゆく空に紫煙吐く今夜最後の休憩時間
朝勤の人らさざめくやうに来る早朝六時波打つ睡魔
工人帽脱げばはらりと髪赤き朝日に放つ心は秘めじ
一日をはじめし人らにうち交じり家路急ぎぬ夜勤の明けて
青ざめて隈あるこれは何ならむ朝の鏡に見知らぬかたち