大姫月乃鱗草
竜門勇気

満月から三日目の
良く晴れた夜空に浮かぶ月が
一番高く昇るその瞬間
かぼちゃ畑に
化石が生えるんだって

クラスのおしゃべり
おとぎ話を聞いて
僕は計画をたてた
町一番大きなナップサックを
縫い上げるよ
小さなミシン
かたかた鳴ってかたかたかたかた走って
お父さんもお母さんも
ガミガミうるさいおばあちゃんも眠ってる!
青暗い町に黄色い明かり
スコップと
チョコバーをポッケにいれて さあ、いこう

全部スナッチ!
世界一の化石博士
それは僕さ

全部スナッチ!
さぁ今
かぼちゃ畑に
化石が実りつつあるよ

電信柱の影が
ランプの明かりを
怯えて隠れる
たった十歳の少年が
夜の支配者さ
ナップサックは帰りは重い
ポッケのチョコバーは
それまでには無くなるだろう

川辺に咲く
ヒメツキノカケラ草
夜露が松の枝から散り
僕のまつげに虹を創る
丘を越えたかぼちゃ畑に
一面の化石!

僕はここで
全てが夢だと気付いたけど
目を覚ませば
夢を忘れた老人だと気付いたけど
ただのまどろみの
幻なんだって気付いたけど

赤らんだ小さな手で
化石を持ち上げた
なんだ
僕の中にも
まだこんなに沢山の
夢が 希望が 可能性が

まつげの虹が輝いた
白けた化石が
濡れそぼり色を帯びた
蘇った化石の雑踏に
目覚めながら飛び込み叫ぶ

僕は
終わってなんかない

僕は
終わってなんか
ないんだ!


自由詩 大姫月乃鱗草 Copyright 竜門勇気 2009-03-06 22:03:57
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