盲目
治
両手を伸ばして辺りを探り
愛しき息子の名を幾度
砂粒噛み締め水払い
啜る泣き声耳澄ます
滴を模した土塊天井
濾過した甘水殻を刺す
足先濡らす古池潜り
あの子の波紋を手繰り寄せ
額が痛いと声嗄らし
蚯蚓も苔も口にせず
ならば痛みが取れるまで
その傷延々舐めてやろ
舐めても舐めても泪は涸れず
永久にも等しく泣くばかり
舐めても舐めても痛みは引かず
嗚咽はついに呻り声
殻寄せ抱きしめ愛しき名前を連呼する
土塊脇から湧き出す甘水
池の嵩増し温度を冷やし
私と息子の距離開く
殻は剥げ落ち口は裂け
愛しきあの子の姿は何処
それでも私の坊に戻るなら
永久を越えて舐めましょう
額に伸び立つ角を舐め
愛しき息子の名を幾度
しゃ嗄れた声で名を呼ばれ
返事をするにも声が出ず
愛しき息子の角爪が
何故私の喉を刺す
滴を模した土塊天井
甘水落とし嵩を増す
波紋と砂利に押し揺られ
光も抱けず土に成る