スペクトル協和音
北街かな
たぶん僕らはとても細くてきっと光に近すぎて
気絶しそうなほどの色彩に囲まれ目まぐるしく無数の点を打ちながら、
自分が誰なのかを、日々、空に問うているのだろう。
たぶんキミはとても弱くて、少しだけ闇に近くて、
全身からあふれる、目には見えない黒い血に、脳と、目玉と指先をやられ、
息の吸い方すら、よく忘れているのだろう。
ましてや分不相応の高望みや感受だの衝動だの愛憎だの欲だのに振り回され
道端の一輪の花よりも
生きることに不都合ときている。
それは朝方か、街の眠る頃だろうか。
時間がキミとは無関係に流れ、カラダが空間から少しずつ離れてゆくと感ずるとき、
全てが光にも闇にも区別されず、色のない無数の点の群れに見えるのを知っているか。
どっちが空か指を指すのもためらわれ、震えて何も出来ぬまま
ふと
キミの爪先が
落とした涙をつま弾く
「ここが地上だ」と
聞いたことの無い音色で
奏でてみせるに違いない。
歩き出せば律動し、呼吸は旋律となり、
爪先と涙と道端の花は
愛しいヒトと似た声で、輪唱するだろう。
空に向かい、高らかに。