東京に行ったらば
もっと自由になれるのかと思っていたらば
まずはペニスがないことにはどうにもならなかった

どこへ行っても
おじさんの横ににっこり笑って座る役目しかゆるされなくて
わたしは苦手なたくさんの嘘をつくこともできなくて
ただ眺めていたり煙草を吸ったりで
うっかり思ったことを述べてはおじさんを激怒させたりした

わたしもどうにかしてペニスが欲しかったので
結婚したりたまたま男の子を生んだりしてみたが
当然自分にくっついているペニスでないとどうしようもないのだ

どうにかペニスをもって
恋人の白い足の間のあたたかい隙間にゆるやかにねじ込んだり
でらべっぴんとかいういやらしそうな名前の雑誌に白い液を飛ばしたり
おっぱいの大きな女の子を後ろから一生懸命に犯す夢をみたり
おまえぶっ殺してやると胸ぐらをつかみ合ったり
俺は世界の中心だぜと酔っ払って叫んでみたかったのだけれど

まずはペニスを持っていないとどうにもならない
どうにもならないと思い知るだけだったのだ
ペニスペニス
ペニスを持っていたらば
ペニスを持っていたらば

そういえば
たくさんの人が東京にはいたけれど
みんながみんな無視し合うことで空間を生み出す苦しい苦しい場所だった
優しさは貪られるもので最後の最後の一滴まで吸い尽くされて
野望や欲望や蹴落としや裏切りに満ち満ちていた
どうしてみんなで助け合わないのだろう
どうやったらみんなで助け合えるんだろう
景気はどうやったらよくなるんだろうみたいな底なし沼さ

わたしは出かけるので鍵をかけた鍵がかかっているかを確認した
確認して車に乗り込んだが鍵が本当にかかっているのかわからなくなった
わからなくなったので鍵がかかっているか確認しに家まで戻り鍵を確認して
念のためもう一度確認して車にのったがもうどうだったかわからなくなった
わからなくなったので鍵がかかっているのかドアへ確認しにいった
車からドアへドアから車へ車からドアへドアから
わからなくなって家に戻って鍵をあけてベットに
東京にはカウンセリングとかメンタルクリニックであふれていた

ペニスはペニスはどこ？
落ち着いて
わたしはもういい具合にすっかり太っておばさんになったし
おじさんは放っておいても自然におじいさんに変わるから
今わたしはホームレスのひとりもいない街で平和に暮らしている