ひとり
ふるる

物心ついてから
ひとりだという気持ちが強い

家族や友人や物や時間
のあるなしに関係なく
ただ自分の癖として
ひとりだという気持ちが強い

楽しい場所にいても
好きな人の隣にいても
ひとりだという気持ちがますます強い
居場所がないのとは違う
お前はひとりなのだと言う
自分の背中を見ているもうひとりの自分
が常にいるのだ

ということは
ふたりだという気持ちが強いのか
その気持ちは常にわたしを冷えさせる
心の冷え性とでも言うべき

心の冷え性の副作用
それは一つの大きな穴
貪欲な口
様々なものを求めては手に入れて
作り出しては眺めて
けれども冷えは治らない

物心ついてから
ふたりだという気持ちが強い
ふたりは決して交わることはなく
ひとりが常にもうひとりの背中を見ている関係

後ろにいる自分は
かつて鏡を覗いたことがなく
自分の顔を知らない
自分自身の後ろ姿しか知らない

いつかわたしが振り返ったとき
鏡の中にはないもうひとりの自分の顔を
見ることになるかもしれないが

恐らくそこに
顔はない



自由詩 ひとり Copyright ふるる 2009-03-02 22:54:46
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