映(エイ)
フクスケ
冬はすでに去った
夜明け前の闇の曖昧に
ふいに訪れる山茶花の幻影 散った花びらの
乱れ重なり
誰かの記憶が
隙間に紛れ込む
宛名不明の手紙のように
開封されない
誰かの記憶
美しく無残な…
散った花びらの
乱れ重なり
始めから反復などなかったのだ
忘れないために
新しい昔譚(むかしばなし)を作る
陰画の皮膜のふちのめくれに
血を流す
聴こえない声の
呪文の始まりに
聞耳をたてる
波動する網膜
波打つ視界
自由詩
映(エイ)
Copyright
フクスケ
2009-03-01 10:46:17