アンティーク、アンティーク
れつら
年をとる、っていうことが、
リアルに想像できない
ランプの光がゆるい喫茶店で
丸太造りの壁にもたれかかってて
木の息遣いを感じる、と
あなたは言った
色艶はニスで光って
皮膚呼吸を止められている
もう二度と蘇ることがないよう
美しく殺されたまま
わたしたちは店を出て
川べりの道を歩いた
街路は手足を時折もがれながら
それでも伸びかけている木々に覆われていて
時々こうやって、枝を落としてやらないと
美しい花を咲かせることはできないのだ
その口ぶりが得意げに聞こえて
なんとなく彼を許すことができない
生きている間にしか
生きているものには会えない
死んだことはないからわからないけどね
きっとそう、
わたしは頷いた
でもそれはきっと、死んだものでも同じこと
その木に触れるのが躊躇われて
わたしは今
うまく息をつげないでいる