ふるえる糸
あ。
もうずっとずっと昔のことだ
公園でかくれんぼをしていた
わたしは見つからないように
自分よりも背の高いしげみに隠れた
しゃがんでふと斜め上を見ると
大きな蜘蛛が巣を作っていた
女郎蜘蛛というのだろうか
詳しくはないのでよくわからないのだが
子どもだったわたしにはとにかくそれは大きく
恐怖を与えるのに充分だった
叫び声をあげそうになった
でも隠れているから必死に我慢した
そして一度そらした目をもう一度そちらにやる
蜘蛛の糸が太陽の光で
不思議にてらてらと輝いていた
妖艶な美しさを子どもながらに感じた
思わず見とれていると
鬼だった友人が大声でわたしを呼んだ
その拍子に蜘蛛が動く
振動で糸がふるえる
置き忘れていた恐怖を取り戻し
わたしは叫び声を出して逃げた
逃げながら振り返ると
艶やかで妖しげな糸は
まだゆらゆらとゆれていた