ふるえる糸
あ。

もうずっとずっと昔のことだ


公園でかくれんぼをしていた
わたしは見つからないように
自分よりも背の高いしげみに隠れた


しゃがんでふと斜め上を見ると
大きな蜘蛛が巣を作っていた


女郎蜘蛛というのだろうか
詳しくはないのでよくわからないのだが
子どもだったわたしにはとにかくそれは大きく
恐怖を与えるのに充分だった


叫び声をあげそうになった
でも隠れているから必死に我慢した
そして一度そらした目をもう一度そちらにやる


蜘蛛の糸が太陽の光で
不思議にてらてらと輝いていた
妖艶な美しさを子どもながらに感じた


思わず見とれていると
鬼だった友人が大声でわたしを呼んだ
その拍子に蜘蛛が動く


振動で糸がふるえる
置き忘れていた恐怖を取り戻し
わたしは叫び声を出して逃げた


逃げながら振り返ると
艶やかで妖しげな糸は
まだゆらゆらとゆれていた



自由詩 ふるえる糸 Copyright あ。 2009-02-27 12:05:40
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