(無題)
キキ

鏡のふちに
霜が降りている
唇のはしが腫れはじめ
痛みがやむころに
枝先から影が落ちる
おもむろに声をあげようとして
言葉にならなかった音の破片が
ガラスを震わせる
あなたが
どこから来たのか知っている
どこから生まれ出て
ここへたどり着いたのかを
けれど知ることはない
あなたが
どのようにここまでやってきて
どのようにわたしを愛するのか
鏡のなかで
役に立たない互いの
左手だけが
あらゆるものの名を記憶している
扉にて
寒暖の差に身震いし
その重いコートを脱ぐべきか
わからないでいる
声にならず
思わず咳き込んだ
その苦しい音が
あなたの名前であり
わたしの輪郭でもある


自由詩 (無題) Copyright キキ 2009-02-26 22:38:55
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
(無題)