家となりたい
ふるる

なんでもないことのように日々が
過ぎる
実際はなんでもかんでもが
おこる
どうしようもなく失くしたり
左足だけ見えなくなったり
足りないながらも戻ったりするが
一切の感情は描かれず
まるで立ち枯れてゆく 木
言葉は枯葉の必死さでぶら下がる
下がり気味の右の肩から芽が生える
しかし一切の感情は描かれず
一節の歌も歌われない
別れてゆくものの気配を
木はどうすることもできない
ただあのひとは見ているし
じっとじっと目をこらし
一部始終を見て
木にとって
見ることと描くこととぶら下がることはほとんど同じ
でしょうからね

そして年輪を重ね
皮を脱いでゆく
材が堅くなるようにね
内へ内へと密度は濃くなり
鳴るごとに木々の森は風に抜け
しかしそれがあまりにも内側なので突き抜けて
隣あたりへの扉となり
こもりきり森で描いたものが
突風とともに外へあふれ出し
転居のお知らせとともに
ある日などという便利なものがあるとするなら
ある日当たりのよい場所が
新鮮な香りを放ち真新しい木材となり
カンナ、なめらかな木肌まっすぐに
雨風から誰かを守る
ドキドキする
守り人
家となりたい



自由詩 家となりたい Copyright ふるる 2009-02-26 09:56:52
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