家となりたい
ふるる
なんでもないことのように日々が
過ぎる
実際はなんでもかんでもが
おこる
どうしようもなく失くしたり
左足だけ見えなくなったり
足りないながらも戻ったりするが
一切の感情は描かれず
まるで立ち枯れてゆく 木
言葉は枯葉の必死さでぶら下がる
下がり気味の右の肩から芽が生える
しかし一切の感情は描かれず
一節の歌も歌われない
別れてゆくものの気配を
木はどうすることもできない
ただあのひとは見ているし
じっとじっと目をこらし
一部始終を見て
木にとって
見ることと描くこととぶら下がることはほとんど同じ
でしょうからね
そして年輪を重ね
皮を脱いでゆく
材が堅くなるようにね
内へ内へと密度は濃くなり
鳴るごとに木々の森は風に抜け
しかしそれがあまりにも内側なので突き抜けて
隣あたりへの扉となり
こもりきり森で描いたものが
突風とともに外へあふれ出し
転居のお知らせとともに
ある日などという便利なものがあるとするなら
ある日当たりのよい場所が
新鮮な香りを放ち真新しい木材となり
カンナ、なめらかな木肌まっすぐに
雨風から誰かを守る
ドキドキする
守り人
家となりたい