3月
Giton
峯から峯へ、乢
(
たわ
)
から乢へ、
鈴をたくさん着けた馬車が
夜どおし走り回っている;
春の夜は銀色で、君の眼は茜色、
せせらぎは白いほむら、君の髪は緑、
放射するコロナ、鼓動する静かな祈り、
もう寒くはないのに、君の肌は花の芽
のように縮み、少しずつ膨らみ、ぼくの手
のなかで開いていく。そして、朝露ひかる
草の奥で疲れはてた鹿のように眠り、
鈍い一日がまた始まる。
春の夜の魔法は解け、渓の水はめぐり、
ぼくたちは仕事に励む;木の間から寝ずに
見守っていた鵺鳥が音を立てて飛び立つ。
自由詩
3月
Copyright
Giton
2009-02-26 07:59:12