いくつもの、夜を越えて
さくら

きみが帰ってこないあの日から
砂時計の砂はさかさまにこぼれて、こぼれて、
しだいに、ちいさな子供になってしまう、夜
遠くで、つぶやくきみの言葉が、わたしの名前だといい


そんなふうにして、眠る
時間はとても優しい


幼いころの名前をよばれると、わたしを縁取った部分だけが
金色の砂になって更に、さらさら、こぼれてゆく
そうして、きみが現れる
裸になった夜には、
前髪が少し重い


永遠なんてない
三つ編みを覚えたばかりの女の子は
今はもういない祖母に、お願いしたことがある
ずっと、ずっと祖母は祖母でいてほしいと
いずれ、誰かを失ってしまうことに初めて怯えた夜


あの頃、朝焼けの風の匂いは
湖に反射して煌く砂と一緒に
こぼれて、こぼれて空にまぎれていた
いくつも、夜を越えて


やさしい時間を思い出しては、仰向けに眠った



時折、変化しない永遠を願うこともある
桜が咲いて、
春が咲いて、
変わらない四季を巡って
いきがる涙の原石は
永遠に
永遠に

おんな


自由詩 いくつもの、夜を越えて Copyright  さくら 2009-02-24 10:26:59
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