夢
Giton
最後に、力なく向き直り、さようなら、と言って
歩いて来る君は悲しそう、マジェンダのパーカーとロザリオ、
さようなら、と言うまでに、どんなに君が苦しんだことか、
それを思うと、どれだけ涙が溢れても足りない、
しかし、こちらへ俯いて、歩いて来る君には、
ぼくの姿はもう見えないのだっけ、行き過ぎよう
とする君を、抱き止める力もぼくにはない、昔の人の
ように、君の行く手を折り畳んで燃やしてしまうことも叶わぬ、
どうせなら、ぼくの目を潰しておいてくれるとよかった、
君の足音が聴こえぬよう、鼓膜をなくしてくれればよかった、
君が立ち去ったあとには、もう世界はない、君の遠ざかる
足音とともに、世界が閉じて行く、そして、君の足音が
消えたとき、ぼくは
もう、なかった。