ふるる

ひとりのおんなの形をしたいのちが
染み付くほどあかい
燃える野に立ち
斜めになびき

腹に手をあてて
まだ完全にはにんげんでない形をしたいのちが
ここにいるとは
とうてい
とうてい

夕暮れが
隅々のものを引き連れて夜になる
熱っぽいだるい眠りに引きずられる身体
あかい血増え続ける身体
これはだれの身体

ひとりのおんなの形をしたいのちは
ひとつの器となり
いのちを
鋳型にはめる
魚や
鳥や
獣の
可能性を丁寧にそいでゆく

このこはきっとおんなです
すでに卵巣と卵子を持たされて
透明な自分の身体をさぐり
腹にちいさな手をあてていることでしょう

このこはきっとおんなです
子孫を残すためには
他のおとこを受け入れ
いずれひとつの器とならねばなりません
そしてひとつの器となれば
身体を変えあかい血を増やし
いのちを
鋳型にはめることでしょう

おそろしいけれどおかしいのよもう
いつの間にか
はじまってしまった
はじまってしまった
あの繰り返し
あの繰り返しが

腹に手をあてて立ちすくむ
おんなの瞼にまだ染み付いている夕日は
誰かの身体の中の
あかい血のように
あたりいちめんを浸したままである




自由詩Copyright ふるる 2009-02-23 15:41:28
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