草花短歌【春夏秋冬】
ゆりえ
≪〜春〜≫
◇パンジーに雪降り積もる寒い朝けなげに小首かしげて笑う
◇待ちきれず眠い眼こすり顔を出し辺り見廻すチューリップ
◇れんげそう髪にかざして春の野を駆けてみたいな童心になり
◇菜の花はお日さまが好き春風と蝶を相手に終日遊ぶ
◇夢のせて何処へ行くのかたんぽぽの綿毛は風の恋人になり
◇遠い日にしろつめくさの首飾りかけて遊びし日の暮れるまで
◇あでやかに咲き誇るなり牡丹花春爛漫の今を盛りに
◇妖艶な色香を放ち緋牡丹は遊女の如く佇んでをり
◇物憂げな雨の降る午後ふと見れば庭の片隅サクラソウ咲く
◇楚々と咲くすずらんの花いとおしく白きうなじにそっとくちづけ
◇真っ白なマーガレットで恋占いあなたのことが好き・嫌い・好き
◇忘れたき想い秘めたるわが胸に忘れな草の青が沁み入る
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≪〜夏〜≫
◇夏は来ぬ炎天の下ひまわりは毅然と立ちし力溢るる
◇「情熱」の花言葉持つブーゲンビリア隠した棘で誰を刺そうか
◇絢爛と墨田の花火咲きにけり風情ある名に華やぐ心
◇艶やかに百花繚乱咲き乱れ川面彩る花火師の技
◇咲き匂う朝顔の花に露光る夜明けの庭の静けさの中
◇朝風に揺れる桔梗や涼やかに夏の終わりを告げる庭先
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≪〜秋〜≫
◇秋高し川面に光さざめきて柳もそよぐ風立ちにけり
◇玉簾咲き初む庭に日差し揺れ午後のひとときゆるやかに過ぐ
◇秋の野や薄紅色のコスモスは色なき風にその身ゆだねて
◇菊の香の小庭に仄か漂いて吹く風やさし秋の夕暮れ
◇猫のいる庭に日差しもやわらかく秋明菊の花が咲き初む
◇怪しげに燃ゆる紅ひく曼珠沙華 誰を待つのか秋の夕暮れ
◇砥峰(とのみね)のすすきが原に秋陽さし揺れる白銀(しろがね)風とたわむる
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≪〜冬〜≫
◇山茶花の紅の花びら散り落ちて冬の日暮れの淋しき小路
◇雪降りて身を震わせる山茶花のピンクの花びら可憐なりけり
◇寒菊や毎年同じ場所に咲き冬の小庭に彩り添えて
◇冬薔薇の色褪せてなほ凛として咲き続けをり寒き小庭に