宿題
藤坂萌子

なんで千切れていたのかな
あのバス停には、蝉のからだがおちてた
きっと、
もう何回も死んだのだとおもう

されるがままになっている時は、
「どうかあなたに触れさせて」と手を伸ばしてる気持ちになる。
でも、触れたい、というのとは、微妙にちがうみたい。

片手のないねこのお引越しのはなしをきいて、
きみは、
ぼくにはよくわからないな、と言った。
今なら、もう、どうでもいいと思える
きみには、わからない。ただそれだけのこと。

きっと、もう何回も死んだのだとおもう。

お湯を張ったホテルのバスタブに浸かって、
買ってもらったアイスを食べた。
いちばん、すきな乗り物は飛行機
にばんめは、夜のタクシー
あるひとつの感情だけで存在する瞬間、
バスタブの中でオフィーリアごっこをする

「元気になったね」「うん、そうだね」
でもね、あたし、リカバーしたって言うより、
なにか、べつのものになったのだと思う。
きっと、もう何回も死んだのだとおもう。
そういえば、
女の人になんか、なりたくなかった。

天国みたいな夢が見れますように、って眠ったら
夢の中で、天国宛に手紙を書いていた
天国に、たくさんのゆるしを乞うことが、私の仕事なのだった
手紙には、本当のことしか、書いてはならず、
どうか、どうか、と
あとは、念じるだけだった。


すごく、すごく
さみしいゆめだった


自由詩 宿題 Copyright 藤坂萌子 2009-02-21 00:21:59
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