賢治ノ星 
服部 剛

地下鉄の風に背中を押されて 
階段を下れば 
ホームの端を 
黄色い凸凸道が
何処までもまっすぐに伸びていた 

いたずらな風が 
吹けば 
すぐによろつく私だから 

凸凸道の内側を 
踏み越えぬよう
無心で歩いてゆけばいい 


( ほんとうはもう 
( 銀河を走る列車以外に 
( 私の乗りたいものはない・・・ 


地下鉄の風に抗いながら 
階段を上がれば 
地上の歩道を 
盲人用の凸凸道が
遠い暗闇に向かって刺さっていた 

気まぐれな風が 
吹けば 
道を踏み外す私だから 

もしも脱線した時は 
何度も戻って 
また歩きなおせばいい 


( 擦り剥いた膝小僧に血を滲ませ 
( 独りわらって立っている 
( 私はデクノボウの化身です・・・ 


今夜も頼りない後ろ姿で 
とぼとぼ歩くこの背中を 
不思議な夜風のてのひらが 
いたわるように 
押すのです 

誰一人いない 
冬の深夜の冷たい道に 
独り立ち
オリオンを仰ぎながら 
音の無い声で( 賢治さん )と叫んだら 

冬の星空の間に 
一瞬 
流れ星が、尾を引いた 








自由詩 賢治ノ星  Copyright 服部 剛 2009-02-20 23:04:53
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