がれきの工作 Ⅰ
《81》柴田望
■潜在意識のプロトコルを宇宙に合わせろ・・・
■われわれは受信した
朕深ク世界ノ大勢ト帝國ノ現状トニ鑑ミ・・・
まだはじまってもいないぞ終わりは
街は真っ黒に焼けたがれきであり
空は不気味に青寒い
なあんだ、価値って壊れるのか
するといままであっちこっちへ気を遣い
だいぶ払ったけどぜんぶ無駄だね
貨幣が無価値になるところまではいかなかった
正直ほっとしてもいられなかった
何よりも大事に大事に育ててきた
われわれのなかにいた小さな人を
われわれはまる焦げに焼いてしまった
その分ぽっかり空いてしまい
狂気が当たり前になった
■これは、学校祭が終わった後の教室
これは、枯れた留守の蜂の巣
これは、大勢の花火の後のバケツ
汚れた灰皿みたいだ
灰皿は磨きあげられ
バケツの水はどぶに流れ
枯れた蜂の巣はぼろぼろになって土壌を肥やし
生徒たちはいつもの授業へ戻るが
かれらはもう、あの味を一度知ってしまったオトナだ
ぜんぶ壊れてる世界では
さらに壊したって罪にはならない
そうか、がれきとは時代のありさまではなく
心のありかたなのか
クニやキギョウ、オミセを目の敵にする
孤独なクレイマァの心みたいに
違法性を摘発されるクニやキギョウ、オミセの内部にも
がれきがはびこっている
がれきとは関わりあいたくないごめんだね
抜き身刀の侍はいつか必ず斬られる
でも先生の心にだってがれきがないとは
限らないよ、とりっぱな先生がおっしゃる
がれきのない大人がりっぱとは限らないのか
子どもたちは子ども用の遊具なんて嫌いだ
もっと何というか、実用的な、大人たちの使い古しがいい
ちょっとくらい指の先を切ったっていいのだ
福井市のオミセでダガーナイフを購入し
表通りを血の海にした若者は
がれきで遊んで指を切ったことなどない
あきばのがれきは危険すぎて
子どもたちを遊ばせられない
さらに壊したって罪にはならない
そうか、がれきとは心のありかたであり
クニのありさまに近い
■事件現場はあっという間に片付けられ
何かあったことさえ誰も知らない
われわれはトリアエズナントカスルのは上手いよ
トリアエズナントカヤリマスで長いこと食べてきたんだ
こつこつ土台を敷きなおす暇などなかった
足腰弱くぐらぐらと高いビルを建てる奇術を競い合った
トリアエズ不在のまま、しばらくの間替わりをたて
ビルががれきになったとき、役不足さに気づいたが
もう随分前から、ほんとうにいなくなってしまった
教室の窓からいくら眺めても
空き地にも、あきばにも
がれきの下に埋もれてもいない
それならばいつまで居たのか
いつからいなくなったのか
ちょっと目を離した隙に
ちょっと手が離れたとたん
まる焦げに焼かれて死んでしまった
われわれのなかにいた小さな人
小さな人、小さな人、小さな人、、、
■指名手配のプロトコルに顕在意識を合わせろ・・・