少女について
山中 烏流




例えば
結わえた髪を解く仕草や
袖口を正す背中
傾いた眼鏡を直す行為を
指差すひとが
いてしまう、から

靴下とプリーツの隙間
誰かの視線が
それを、過ちと厭う度
私は唇を結び
たくさんの秘密や、様々を
その
膨らみの中に
しまい込むのです


******


延々と咎められた
爪を噛む癖は
昨日、砂場で溺れた時に
どこか奥の方で
落としてきてしまいました

そのせいか
手持ち無沙汰な
私の指先は
机上でくるくると遊びながら
何か、を
探しています


小さく鳴く歯軋りに
砂の味が、混じって


******


「瞬き」を覚えた日
揺れている睫毛の音が
あまりにも、鮮明に
聞こえたものだから
驚いた私は
理由もなく/咄嗟に
一つの揺らめきを
殺してしまいます

手のひらで
しばらく転がしたあと
吹き飛ばした、それは
果たして何処へ
去ったというのでしょうか


あの日から
瞬きをする度に
そんなことを考えては、また
一つずつ
殺してしまうのです

戻らないことくらい
今の私には
分かっていると、いうのに



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自由詩 少女について Copyright 山中 烏流 2009-02-19 13:57:19
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