少女について
山中 烏流
例えば
結わえた髪を解く仕草や
袖口を正す背中
傾いた眼鏡を直す行為を
指差すひとが
いてしまう、から
靴下とプリーツの隙間
誰かの視線が
それを、過ちと厭う度
私は唇を結び
たくさんの秘密や、様々を
その
膨らみの中に
しまい込むのです
******
延々と咎められた
爪を噛む癖は
昨日、砂場で溺れた時に
どこか奥の方で
落としてきてしまいました
そのせいか
手持ち無沙汰な
私の指先は
机上でくるくると遊びながら
何か、を
探しています
小さく鳴く歯軋りに
砂の味が、混じって
******
「瞬き」を覚えた日
揺れている睫毛の音が
あまりにも、鮮明に
聞こえたものだから
驚いた私は
理由もなく/咄嗟に
一つの揺らめきを
殺してしまいます
手のひらで
しばらく転がしたあと
吹き飛ばした、それは
果たして何処へ
去ったというのでしょうか
あの日から
瞬きをする度に
そんなことを考えては、また
一つずつ
殺してしまうのです
戻らないことくらい
今の私には
分かっていると、いうのに
.