シャボン玉
ほしのみくず


命をわけたシャボンが
あまねく広がる田の空を
おもむろに這いのぼる

シャボン、シャボン
あなたを見上げて
遠く咆哮を響かせます
置いていくなと、低く
低く唸るのです

大地をたゆたう泡沫の玉
暖色の命を吸い込んで
焔のような光を放つ
悲しみを孕んではかなく舞うんだ

シャボン、シャボン
茶色い背中に西日を受けて
まだ息もない地に浮くあなたを
見つめています

舐め終えた傷口がひりりと痛んで
私の前脚を痺れが包むよ
それはまるで
破ぜる時のあなたの痛みのような

凍てつく故郷に吹く風は
私の髪を梳いて
記憶を掬って
呼吸ごと攫っていくんだ

シャボン、シャボン
私を置いて、行かないで



自由詩 シャボン玉 Copyright ほしのみくず 2009-02-19 01:00:38
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