百鬼詩拾遺 <1>
nonya

<付喪神 (つくもがみ) 三体>




どこか


ここではないどこかへ
自分探しの旅に出た君が
改札口をすり抜ける頃には
自分は自宅で留守番している
ここではないどこかで
どこかの馬の骨と知り合った君は
もう自分のことなんて忘れてしまっている




なにか


先週末から喉に刺さっている
魚の骨ではないなにかは
たぶん詩的な言葉なんかじゃない
昨夜から奥歯に挟まっている
牛のスジではないなにかは
きっと詩的な言葉なんかじゃない
嗚呼 なにかが書きたくてたまらない




いつか


成功すると言って滑落していくいつか
精進すると言って肥大していくいつか
結婚すると言って逃走していくいつか
反省すると言って前傾していくいつか
いつかすると言って老化していくいつか
ちょっと旦那ぁ もういい加減にしないと
いつかは棚が落っこちてきますぜ





自由詩 百鬼詩拾遺 <1> Copyright nonya 2009-02-18 19:23:44
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