ネオン
井上とんさく

「夜に星は輝く」って あの娘は俺に言うけど
おそらく俺には 見えやしない
呆れるくらい まばゆい空に
ピンクの星が またたいてる
あの娘がくれた星座盤
寄り添う2つの星は
手垢にまみれて   見えやしないんだ

「夜に星は輝く」って あの娘は俺に言ったけど
あいにく俺には つかめない
キラキラ星が 目に刺さるから
俺は空を 飛ぶのをやめた
あの娘が 照らした夏の空
浮かべたリング きらめいて
いつも今日が 遠のいていく

「朝に星は消えゆく」 夜空に向かって独り言
ついにあの娘に 届かなかった
黒のペンキで描かれた空に
あの娘のピンクは 溶け込んでいく
昨日俺が 見上げた星たちは
都会の空に かすんで見えた
かげりある光じゃ 俺の影は照らせない

「夜に星が輝く」 あの娘のセリフさ
あれからいくつも 星は流れて
まぶしさの中で かすみゆく星
何万回目の夜が明けたとき
あの娘は 何も残さなかった
喜び 悲しみ 燃やし尽くして
あの娘は 何も残さず消えた
消えちまった 
消えちまった
消えちまったんだ



自由詩 ネオン Copyright 井上とんさく 2009-02-18 14:50:13
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