通り雨透き通った虹
楽恵
野球場のフェンス越しに
鈍く湿った風
予感の匂いに満ちたアスファルト
屋上と屋根の向こう側
午後の光を遮断して
雨粒いっぱい雲が来る
金網をつかみ取り
いちもくさんに飛び降りる
私の制服のスカートは長くも短くもない
羽虫が行ったり来たりしている
草叢を踏みしめ小さく刺されながら
プリズムのアーチが架かるか
待っている
じっと立ち尽くし
思い浮かべる
アーチのいちばん外側に
暗く澱んだ影がある
真っ黒な雲の中にある
ぜんぶ持ってかれている
集められている
雲に捕らわれかけられる
汗に水滴が混ざり始める
半円の兆しは現れない
私にはかつて友達や恋人がいたかもしれない
でももう忘れてしまった
空に潰えた渇望の痕に
啓示だけが残っている